天才・孫正義のすべて

(この記事は『孫正義300年王国の野望』を読んだ内容を、僕なりの解釈と伴にまとめています。)

本の概要
孫正義という主人公による、桁違いの情熱と実行力に周囲の人々がみるみる引き込まれていくという、漫画のような本当のお話。
今もそうだが、孫正義のビジョンはスケールが違う。
24歳で起業した時、唯一のアルバイト2名に向かって、ミカン箱の上に立って「豆腐を数えるように1兆(丁)、2兆(丁)と売上を数えられる企業になるぞ!」と意気込んだが、2人は呆れて会社を去ってしまう、というのは有名な話。
スケールの大きな夢を語ると「そんなこと無理だと」去っていく人もいれば、そこに魅了されて同志が集まってくる。この「同志的結合」によって何度も経営危機を乗り越えていく。

この本の面白いところは、ソフトバンクのサクセスストーリーの舞台裏が徹底的に調査されて描写されている点だと思う。

・NTT(≒総務省)の処理が遅いせいで契約者からクレームが殺到すると、「あなたたちが動かないならここでガソリンを被って火をつける」と脅す。
・ビジネス界の巨人、稲森和夫(KDDI)を相手に一度サインした契約書を翌日に撤回するよう求めるという反則ワザ。
・携帯料金に価格破壊をもたらすためのボーダフォン買収。
・モバイルインターネットの可能性にいち早く気づきに、スティーブ・ジョブズに直接交渉して、日本でのiPhone独占販売権を獲得した話。
・東日本大震災の直後、社長の座を降りてでも震災復興と自然エネルギー事業に取り組みたい、と取締役会で直訴した話。
・安倍晋三とプーチン大統領の日露首脳会談に同行する予定をドタキャンし、来日していたサウジアラビアの副皇太子を口説いて10兆円のファンド設立。
などなど。

著者の杉本貴司さんは、日経新聞の記者ということもあり、徹底的に調査できているからこそ、ニュースではわからない現場の臨場感が伝わるのが醍醐味な一冊。

 

孫正義の性格
メディアの前では穏健なイメージのある孫だが、
実際は「強気な野心家」でかなりギャップがあった。

初めの資本金1,000万のうち、700万をイベント出展費で擦ったり、
組織がぐちゃぐちゃな状態でも関係なく無料キャンペーンなどで契約数を取りに攻める。

ちなみに2018年8月の決算発表では、
今でも度重なる大型M&Aにより固定負債が17兆円もあり、
強気な姿勢は当初から全く変わらないw
(時価総額日本一のトヨタ自動車でも13兆円)

しかし、「強気」ではあるが人の話に耳を傾けない「頑固者」とはちょっと違う。
尊敬する人たちには積極的に会いに行って教えを乞う。
部下の意見にもきちんと耳を傾け、自分の意見を変えることもある。
(会議で部下を怒鳴り散らすシーンも多くあるから「優しい」とは違うw)

「強気」と「素直」という相反するような性格は
両立できるものだと改めて勉強させてもらった。

 

周囲の人物
本の中では「同志的結合」という言葉が何度も出てくる。
同志をもったもの同士の結びつきは、他のどんな結び方よりも強いという意味であり、
孫さんの志に共感して、多くの「同志的結合」が生れている。

一世代で時価総額10兆円の企業を作り上げ、日本一の大金持ちとなった孫さん。
孫さんの挑戦がただの夢物語で終わらなかったのは、
無謀な挑戦を体現してきた同志たちがいたからだ。

ここでは、そんな陰の功労者たちの中で個人的に印象に残った方を紹介する。

・宮内 謙(みやうち けん)
30年以上、孫さんの相棒として支えてきた事実上ソフトバンクのNo.2。
孫さんが新しいことに夢中になるときは、既存事業は”みやうっちゃん”に丸投げする(笑)
常々、収益の大国柱を孫さん抜きで守り続けることができたから、
孫さんは新しいことに集中できるというナイスコンビな2人。
今も孫さんはビジョンファンドに夢中だから、通信事業は子会社化して宮内さんに丸投げw

現在はソフトバンク・グループの取締役でありつつ、
ソフトバンク株式会社の代表取締役 社長執行役員 兼 CEO

 

・榛葉 淳(しんば じゅん)
創業3年目の時からいる生え抜きのスーパー営業マン。
ブロードバンド事業を始めた時、一気に契約数を取るために、
孫さんはアルバイトを8,000人も寄せ集めて、
人が集まる場所にパラソルとテーブルを用意して売りまくる作戦に出た。
組織としてぐちゃぐちゃな状態だったのを榛葉さんの奮闘でなんとか形にしていった。

現在は、ソフトバンク株式会社
代表取締役 副社長執行役員 兼 COO

 

・今井 康之(いまい やすゆき)
元々は鹿島建設の営業マンで、孫さんには「社長、自社ビルを建てましょう」と粘り強く営業していた人物。
結局、孫さんは自社ビルに興味がなくて建ててくれなかったが、自社で電波塔を建てることになった時、ソフトバンクにスカウトで入社した人物。

現在はソフトバンク株式会社の
代表取締役 副社長執行役員 兼 COO

 

・宮川 潤一(みやがわ じゅんいち)
元々は名古屋で通信会社を経営しておりそこでIPOをする予定だったが、
孫さんに口説かれて、自分の会社をソフトバンクに売却し、自身もソフトバンクに。
父親が住職で、宮川さんは長男だったから寺を引き継がないといけなかったけど、
親を説得してビジネスの世界へ。
最近ではスプリント再建に奮闘している中、
孫さんがスプリントに見切りをつけて売却しようとしたら
「孫さん、あなたを見損なった」と激怒するなどエピソードが豊富な方。

現在はソフトバンク株式会社の
代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO

 

・筒井 多圭志(つつい たかし)
孫さんが天才技術者と認める「マッド・サイエンティスト」。
フルIPによるADSLという世界初の手段でブロードバンドを始められたのは、
この方のおかげ。

現在は、ソフトバンク株式会社の
常務執行役員 兼 チーフサイエンティスト(最高研究者)

 

・後藤 芳光(ごとう よしみつ)
「攻めの財務」と言われ、数々のM&Aの立役者。
普通、財務担当者は社長の大暴れを防ぐ役目だが、
後藤さんの場合は、金がなくて断念した場合の機会損失を考えるという。
孫さんの金庫番はおそらく後藤さんにしかできない。

現在は、ソフトバンク・グループの
専務執行役員CFO 財務統括 兼 管理統括

 

さらに孫さんの才能にいち早く気づき、創業期を支えた10人の恩人たち。
今はソフトバンクを去ってしまったが、一緒に会社を作りあげてきた社員たち。

多すぎて全員は紹介できないが、
孫さんの周りには優秀な人たちが本当に集まってくるという印象。
そして彼らのほとんどがIT業界は未経験であるにも関わらず、
孫さんの語る世界に惹かれて入社してきたチャレンジャーなのだ。

これは余談だが、彼らは孫さんと対峙するときは、
数字を徹底的に並べて傷口に塩を塗り込むつもりで戦うそうだ。

 

感想

世の中にあるリーダーシップ論を学ぶよりも、
この1冊を読み切った方が真のリーダーというのが
どういう人を指すのかイメージできる。

ソフトバンクは通信事業者から投資会社へと変貌した」と思い込んでいたけど、
大きな勘違いだった。

何年か前に孫さんの後継者探しが話題になっていたけど、
孫さんはまだまだ本気で社会を変えようと邁進している。

この人のリスクの背負い方知ったら、自分の悩みなんてノミ以下だと感じるし、
「あ、俺いろいろ頑張ってるつもりだったけどまだ何もしていないんじゃないか。」
って思わされる。

それでも、孫さんは孫さんで
「自分は坂本龍馬と比べたら何も実現できていないし、
今死んでも死にきれない」という。

私、野心も努力も何もかも足りてなかったわ。

分厚い本だけど終始アドレナリン出まくりで熱中して読んじゃいました。